「竺仙」は、実に所謂(いわゆる)志ぶい物の総本家本元にして、其(その)染出せる中形の浴衣地手拭地を始め、凡(すべて)て染模様色合の風流古雅にして渋みある、斬新奇抜にして意気なる、到底類と真似の出来得べからざる者にて、通人社会の垂涎措(すいえんお)く能(あた)はざる所なり。
故に苟も通人を以て任じ、或は任ぜらるゝ輩(やから)にして「竺仙」の染物を着せざるなく、之を着せざれば、未だ似て通を談ずべからずと云ふ。